過去の開催記録

第57回ワークショップ

配当政策 −理論とプラクティス−

日  時
2007年3月10日(土) 13:30〜17:00
場  所

神戸大学大阪経営教育センター

参 加 費

概 要

三月のワークショップは、企業の「配当政策」について考える場にしたいと思います。東証一部上場企業が2005年度中(2005年4月〜2006年3月)に支払った配当総額は、5兆円を上回りました。前年比で3割以上も増加したようです。企業が自社株買いによって株主に支払った金額も5兆円を上回りました。配当と自社株買いの合計であるペイアウト総額が、初めて10兆円を超えました。

配当と自社株買いに積極的な企業が増えています。携帯事業の雄であるNTTドコモの一株当たり年間配当額は4,000円です。株価は18万円前後ですから、配当利回りは2%を超えます。自社株買いに積極的な松下電器やトヨタ自動車の筆頭株主は、いまや自社(自己口)です。両社とも発行済み株式数の10%以上を金庫株で保有しています。村田製作所は、2002年から2005年にかけて、稼いだ利益の9割以上を配当と自社株買いで還元しました。かつて、わが国企業の配当政策と言えば安定配当でした。業績にかかわらず安定した配当を支払っていました。自社株買いは解禁されていませんでした。わが国企業の配当政策が変わり始めたのは、1990年代後半からでしょう。ときを同じくして、自社株買いに関する規制緩和が進み、多くの企業が自社株買いを行うようになりました。

何が企業の配当政策を変えたのでしょうか。配当政策は企業経営とどのような関係があるのでしょうか。今後の配当政策はどのような方向に進むのでしょうか。独自の配当政策を工夫している企業がある一方で、配当政策に悩んでいる企業も少なくありません。現金の配分である配当や自社株買いは、企業の現金保有とも関係があります。手許資金が豊富な企業は、敵対的買収のターゲットになりやすいと言われることがあります。ターゲットから逃れる一つの方法は、大幅な増配や自社株買いによる株主還元であると言われることもあります。本当にそうなのでしょうか。もうすぐ三角合併が解禁されます。買収防衛のためには株価を上げる必要があります。増配や自社株買いは、大幅な株価の上昇につながるのでしょうか。配当政策は価値を生むのでしょうか。

ワークショップでは、ファイナンス理論に詳しい実務家の方々をお招きして、企業の配当政策について、いま一度、理論的かつ実践的に考えます。多数の方のご参加をお待ちしております。

第57回ワークショップでは,「配当政策—理論とプラクティス—」について議論しました。当日(3月10日)は,会員,非会員を問わず,多数の方々にご参加いただき,誠にありがとうございました。今回は,NTTドコモと松下電器の財務部の方々,ならびに新光投信のファンドマネージャーの方をお招きし,配当政策について,企業の立場と投資家の立場から議論をしました。企業における配当政策決定のプロセス,何が配当額を変えるのか,企業の悩み,投資家は増配を望んでいるように見えるが実は悩んでいる,など様々な意見が交換されました。途中,当研究科の加護野教授から改めて問題提起があり,企業は株主を重視するのがよいのだろうか,という大きなテーマについて,参加者の皆様と頭を悩ませた土曜日の午後でした。フェリシモ,村田製作所など,特徴的な配当政策をとっておられる企業の方からも貴重なお話を伺うことができました。ワークショップの概要は『ビジネス・インサイト』第58号に掲載する予定です。同誌掲載の論文とともに皆様のこの分野におけるご関心、ご理解が一層深まる契機となりますよう願っております。

プログラム

問題提起 砂川 伸幸
(神戸大学大学院経営学研究科 助教授)

講演・パネリスト 稲川 久雄
(株式会社NTTドコモ 財務部
ファイナンス室 ファイナンス担当部長)

講演・パネリスト 山田 隆
(新光投信株式会社 運用一部
小型株・テクノロジーチームリーダー ファンドマネージャー)

講演・パネリスト 中島 美憲
(松下電器産業株式会社 財務・IRグループ
財務企画チーム チームリーダー)

講演・パネリスト 加護野 忠男
(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

コーヒーブレイク

パネルディスカッション
司会:砂川 伸幸(神戸大学大学院経営学研究科 助教授)