過去の開催記録

第54回ワークショップ

モティベーションを極める視点 —理論と持論,感動と集中,体系的エンジニアリング

日  時
2006年7月8日(土) 13:30〜17:00
場  所

神戸大学大学院経営学研究科 本館102教室

参 加 費

概 要

経営学のなかで,人間の問題を扱っている組織行動論(organizational behavior)の2大トピックをあげれば,それはモティベーションとリーダーシップでしょう。本ワークショップでは,その1つ,モティベーション(動機づけ,意欲,やる気)を取り上げます。仕事意欲の喚起し高揚させるための実践を念頭におき,視野を広げ,複眼思考でモティベーションを極めるために,2 つの工夫をいたしました。

1つは,ビジネスの世界以外に,教育の世界,勝負の世界(将棋,ラグビー)を,射程に入れたことです。ワーク・モティベーションに限定せずに,やる気の問題を複眼的にみようというわけです。モティベーションを学ぶのに,ビジネスだけを材料にすると見落としがあるでしょう。われわれは,仕事に打ち込む前に,勉強やスポーツや知的ゲームをする時期を過ごしています。仕事に就く以前に,子ども,学生のときから打ち込むものがあるのは,人生に張りを与えます。また,仕事をゲームのように楽しめるひと,スポーツしているように仕事上の課題に集中できるひともいます。気持ちの高揚,感動,集中の持続について,対局やチームプレーのなかの高度なモティベーションの経験者の生の声にふれることを大切にします。

もう1つは,学者の理論と実践家の抱く持論の双方に注目することです。学生時代に,なぜ勉強や勝負事に打ち込むのかについて,持論(あるいは自論)をもっているなら,フルタイムで働くようになっても,なぜ働くかについて,持論(自論)をもてるはずで,それが本人のモティベーションに影響を与えます。

ほかならぬビジネスの世界でも,ようやく日本企業が元気を取り戻し始めた今,モティベーションこそが重要課題になりつつあるという認識が,各種の報告書で見られるようになってきました。経営戦略が軌道に乗ってからモティベーションに注目するというのでなく,モティベーションもまた戦略と連動しなければなりません。そこから,モティベーションを体系的にエンジニアリングする取り組みが生まれました。

本ワークショップは,このような観点から,教育心理学,コンサルティング,将棋,スポーツの分野で大活躍の方々をお招きし,教育心理学と経営学の対話,経営の実務と経営学の対話,将棋の世界,スポーツの世界と,仕事の世界の対話を実現するための企画です。当日はまず,共同問題提起をおこない,そのあと多面的な角度からパネリストの知恵を交差させつつ,議論をしていきたいと思っております。

第54回ワークショップは、「モティベーションを極める視点—— 理論と持論,感動と集中,体系的エンジニアリング」というテーマのもとに、去る7月8日に開催されました。176名の方々がこのテーマのもとにご参加いただきました。これまでのワークショップで最高の数字だそうで、心より御礼を申し上げます。
ひとえに、皆さん方の関心・意識の高さと、パネリストに望みがたいほどにすばらしい方々をお迎えすることができたおかげです。モティベーションがあらためて大切な問題になりつつあるという問題意識をもとに、学力低下問題を念頭にスタディ・モティベーション論で書籍の多数ある東京大学教育学研究科教授の市川伸一先生と、神戸大学の金井が実践に根付いたセオリーづくりが大事だという共同問題提起をおこない、そのあと、市川先生にもパネルに入っていただきつつ、モティベーションをエンジニアリングするという発想で活発な活動をされている株式会社リンクアンドモチベーション代表の小笹芳央先生、対局の場面での集中力にみられるモティベーションを自分でベストにもっていかれる日本将棋連盟九段の谷川浩司先生、感じることこそひとをともに動かすという信念のもとにラグビー、そして深い気付きの研修プログラムを開発・実施されている元ラグビー日本代表の林 敏之先生をパネリストにゲストとしてご登壇いただき、その場に、金井が司会、同じく神戸大学の高橋 潔がディスカッサント(指定討論者)を勤める形で、すばらしく熱のこもった議論が展開されました。フロアの皆さんとのやりとりにもたいへん有意義な発見が満載でした。
モティベーションという永遠に大切なはずの実践的な研究テーマが、市川先生によりますと、基礎学問分野では活発になっているので、勉学意欲と並んでもうひとつ重要な応用先である経営学における仕事意欲(ワーク・モティベーション)の研究が足踏みしておりますが、これを、現代経営学研究所から、また、神戸大学大学院経営学研究科が核となった研究プログラムから、将来、実践的な持論に根付く新たなモティベーション論が生まれる際には、この日が間違いなくその基点、起点として思い出されることでしょう。
ご参加の皆さん、パネリストの先生方、ほんとうにありがとうございました。また、当日のやりとりを、他の会員の皆さんも、ぜひ『ビジネス インサイト』第55号で、誌上にてご覧いただきますように、お願い申し上げます。

プログラム

共同問題提起
市川 伸一氏 (東京大学大学院教育学研究科 教授)
金井 壽宏 (神戸大学大学院経営学研究科 教授)

コーヒーブレイク

パネル討議
〈パネリスト〉
市川 伸一氏(東京大学大学院教育学研究科 教授)
小笹芳央氏(株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役社長)
谷川浩司氏(日本将棋連盟 九段)
林 敏之氏(神鋼ヒューマン・クリエイト 元ラグビー日本代表)

〈ディスカッサント(指定討論者)〉
高橋 潔(神戸大学大学院経営学研究科 助教授)

〈司会〉
金井 壽宏(神戸大学大学院経営学研究科 教授)