過去の開催記録
日本企業の技術経営の課題 —デジタル家電を事例として—
- 日 時
- 2005年6月11日(土) 13:30〜17:00
- 場 所
神戸大学大学院経営学研究科 206教室
- 参 加 費
概 要
技術経営(MOT)は、ここ数年で多くの人々の知る言葉となりました。日本経済の活性化の鍵として経済産業省の旗振りで、50を超える大学院、および、ノンディグリーのプログラムが開講され、書店にも多くの関連書が並ぶようになりました。しかし、その多くが、技術者にアメリカ育ちの教科書的な技術経営や、あるいは、単なる実務知識をマスターさせるという一方的な教育を想定したものであって、日本企業の固有の状況を考慮に入れ、質的および量的な実証研究に基づいて、現在の日本企業が実際に直面している技術経営の課題に、産学がインタラクティブに解決法を探ろうというものではないようです。
神戸大学大学院経営学研究科では、神戸大学経済経営研究所との連携のもと、従来からの「社会人MBAプログラム」の中で、国内最高レベルのMOT教育と同等の内容を長年提供してきました。ただし、単に輸入された内容を実務家の方々に伝えるのではなく、自分たちが集めた最新のデータを、技術経営のみならず広い学問領域における最先端の研究と照らし合わせたり、実務家の方々と議論を重ねたりしながら、現在の日本企業に適合した知見へと練り上げ、それを実務家の方々と共有していこうという姿勢をとってきました。
今回のワークショップでは、こうした活動の一環として、デジタル家電を事例に取り上げながら日本企業の技術経営の課題と、その解決のための道を、ご出席の皆様と一緒に考えて参りたいと思います。携帯電話、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、薄型テレビなどデジタル家電の分野において、日本企業は、間違いなく世界最高レベルの技術を有しており、その粋を集めた製品は、機能のみならず、使いやすさやデザインにおいても非常に優れたものをもっています。ところが、こうした技術の優秀さが利益に必ずしも結びついていない。ここに、デジタル家電を、技術経営の課題を探る事例として取り上げる理由があります。つまり、技術の優秀さだけでは、価値創造には結びつかない。何かを加える必要がある。その何かを付け加える営みこそが技術経営の本質的な課題ではないか。デジタル家電の事例を詳しく検討することで、その本質的課題が見えてくるのではないかと考えるからです。
今回のワークショップでは、講演者、および、パネリストとして、デジタル家電企業数社から技術経営の実務に携わる方と、技術経営の分野で特にこの産業に造詣の深い研究者数名をお招きし、デジタル家電の分野における日本企業の技術経営について論じるとともに、パネル討議では、他の産業に何が展開できるか、あるいは、他の産業から何が学べるかについても議論していただこうと思います。多くの皆様のご参加を期待いたしております。
現代経営学研究所第50回ワークショップは、「日本企業の技術経営の課題−デジタル家電を事例として−」というテーマのもとに、去る6月11日に開催されました。会員、非会員を問わず、多数の方々にご参加いただき誠にありがとうございました。今回は、関西に拠点のあるデジタル家電に携わる企業3社から講演者をお招きし、それぞれの観点からのデジタル家電産業の状況についてお話しいただき、日本企業の技術経営上の課題についてミクロの戦略とマクロの政策の面から、興味深いパネル討議がなされました。 この講演の概要や討議の内容は『ビジネス・インサイト』51号に掲載する予定 です。同誌掲載の論文とともに皆様のこの分野におけるご関心、ご理解が一層深まる契機となりますよう願っております。
プログラム
13:30-13:55 問題提起
延岡 健太郎(神戸大学経済経営研究所)
13:55-14:25 基調講演
前川 佳一(三洋電機株式会社)
14:25-14:55 基調講演
房 忍(松下電器産業株式会社)
14:55-15:25 基調講演
村松 菊男(株式会社ルネサステクノロジ)
15:25-15:45 コーヒーブレイク
15:45-17:00 パネル討論
〈司会〉原 拓志(神戸大学大学院経営学研究科)