過去の開催記録

第45回ワークショップ

ベンチャー企業のバリュエーション —起業家、ベンチャー・キャピタリスト、アンダーライターの視点—

日  時
2004年3月27日(土) 13:30〜17:00
場  所

神戸大学大学院経営学研究科 206教室

参 加 費

概 要

急速な成長を志向するベンチャー企業にとって、外部からのリスク・キャピタル(株主資本)の調達は不可欠な要素である。開業から短期間のうちに急成長を遂げた多くのベンチャー企業がベンチャー・キャピタルからの出資を受け、その後も株式公開によって多額の成長資金の調達に成功している。しかし、こうした外部株主資本の導入においてはベンチャー企業の企業価値評価(バリュエーション)をどのように行うのかという難しい問題があり、評価をめぐって起業家、ベンチャー・キャピタリスト、アンダーライター間でしばしば見解の相違が生じる。

 大企業(公開企業)のバリュエーションとは異なり、成長初期段階にあるベンチャー企業(未公開企業)の評価には多数の問題が存在する。割引キャッシュフロー法(DCF法)を採用するにも、ベンチャー企業の将来キャッシュフローの見積もりが難しいことは容易に想像できよう。一方、割引率をいくらに設定すればいいのかという問題もある。こうした状況の下で、ベンチャー・キャピタル等の専門投資家は様々な手法を用いてベンチャー企業のバリュエーションを実践している。代表的なものとして、ベンチャー・キャピタル法、ファースト・シカゴ法、マルチプル法などがあるが、資産価格評価モデル(CAPM)を利用・拡張したものとしてもリスク調整後割引率法(RADR)や確実性等価法(CEQ)がある。

 コーポレート・ファイナンスにおいては「株主」にとっての価値の最大化を分析の対象とするのに対して、ベンチャー企業のファイナンスを扱うアントレプレナー・ファイナンスにおいては「起業家」にとっての価値の最大化が分析の対象となる点も重要である。ベンチャー企業のバリュエーションにおける最大の特徴は、投資家と起業家のバリュエーションは視点が大きく異なるということである。分散投資が可能な投資家に対して、起業家の場合、起業家自身が大半の資金を拠出し、しかも起業家のほぼすべての財産をベンチャー企業に投資しているようなフル・コミットメントに近い状況にある。したがって、分散投資が可能な投資家と分散投資が困難な起業家の要求する収益率は異ならざるをえない。

 さらにベンチャー企業が順調に成長し、株式公開を迎える段階においても公開価格の決定というバリュエーションの問題が重要な意味を持ってくる。公開価格の高低によって調達できる資金額が大きく異なるからである。新規公開時においても、起業家、アンダーライター、投資家のバリエーションは大きく異なり、事実、公開価格と初値との間には大きな開きがあることが世界の多くの国々で観察されている。

 このワークショップでは、起業家、ベンチャー・キャピタリスト、アンダーライターをパネリストとして招き、3者それぞれの視点からベンチャー企業のバリュエーションの実践状況、難しさ、今後に向けての課題等について議論することにしたい。

現代経営学研究学会第45回ワークショップは、「ベンチャー企業のバリュエーション」のテーマのもとに、去る3月27日に開催されました。会員、非会員にかかわらず、多数の方々にご参加いただきありがとうございました。起業家、ベンチャー・キャピタリスト、アンダーライターの立場から活発な討議が行なわれましたが、講演およびパネルの内容は『ビジネス・インサイト』46号に掲載されます。同誌掲載の研究論文とともに皆様のこの分野におけるご関心、ご理解が一層深まる契機となりますよう願っております。

プログラム

13:30-13:55 問題提起
忽那 憲治(神戸大学大学院 経営学研究科助教授)

13:55-14:30 基調講演
長谷川 博和(グローバルベンチャーキャピタル(株)代表取締役社長)

15:30-14:45 講演
五十嵐 伸吾((財)UFJベンチャー育成基金 総務部長)

14:45-15:00
山本 一彦((株)クラシック・キャピタル・コーポレーション代表取締役)

14:45-15:15
高須賀 宣(サイボウズ(株) 代表取締役社長)

15:15-15:30
田中 勝真(エンゼル証券(株) 代表取締役社長)

15:30-15:45
東谷 誠司(大和証券SMBC(株)大阪公開引受部長)

15:45-16:00  コーヒーブレイク

16:00-17:00  パネル討論
〈司会〉忽那 憲治(神戸大学大学院 経営学研究科助教授)