過去の開催記録

第62回ワークショップ

非正規労働者の活用と人材ポートフォリオ

日  時
2008年6月22(日)13:30〜17:00
場  所

神戸大学大学院経営学研究科 本館102教室

参 加 費

概 要

バブル崩壊以降、日本の労働市場のもっとも大きな変化は非正規労働者の増加である。その本質は、財務的柔軟性や数量的柔軟性を高めるための「量的基幹化」であった。他方で、近時は非正規労働者の増加によって生じた逆機能(製品・サービスの質の低下、技能継承の阻害、機密漏えいリスク等)を緩和するために、非正規労働者を正社員に転換する企業もでてきた。しかし、経営者は以前の正社員主体の労働力構成に戻そうとはしないであろう。その代替的方策が、正社員と同じ職務に非正規労働者を配置しつつも雇用保障のリスクを巧みに回避する「質的基幹化」である。

質的基幹化は正社員−非正規労働者間における分業関係そのものの変化を内包する。質的基幹化が進んでいる職場では、両者の分業関係が曖昧化し、時に、各々が担当する職務の価値と責任の重さが逆転することもありうる。このような質的基幹化はこれまでスーパーマーケットなどが先行して取り組んできたが、現在では産業界全体に拡大している。雇用形態に基づいた両者間の処遇格差の正当性、妥当性が日本の産業社会全体で問われることとなった。「均衡処遇」問題である。

均衡処遇とは「同一価値労働−同一価値賃金」といった特定の指標のもとで、正社員−非正規労働者間における処遇格差の是正を目指すものである。均衡処遇の目的は、勤続を重ね、正社員と同等の技能を獲得し、その組織への中・長期的貢献を評価すべき基幹化した非正規労働者と正社員の処遇格差を解消する点にあるといえる。他方で均衡処遇はコスト増に直結するので、経営者には正社員と非正規労働者の職務境界をはっきりと区別するインセンティブが生じることにもなる。したがって今後、日本企業では、正社員と非正規労働者の仕事の非重複と質的基幹化(重複)という矛盾をうまくマネジメントする労働者の類型管理が進むことが予想される。

現代の日本企業には、中核的な仕事を担う正社員と周辺的な仕事を担う非正規労働者といった雇用形態を基軸とした単純な二分法ではなく、正社員、基幹化した非正規労働者、それ以外の非正規労働者といった多元化した労働者カテゴリーを、雇用形態の枠を超え、勤続に基づく技能の向上や役割や責任という基準で組み合わせるHuman Resource Portfolio Model (HRPM) が求められている。本ワークショップは、このテーマに関して造詣が深い研究者、守島氏と山田氏、またパートの質的基幹化と正社員の再定義に取り組んでいるイオンの二宮氏とともに議論したい。またパネルディスカッションには本学研究科の金井氏も加わる。

プログラム

問題提起
平野 光俊 (神戸大学大学院経営学研究科 教授)

講演(1) 守島 基博 氏 (一橋大学大学院商学研究科 教授)

講演(2) 山田  久 氏(株式会社日本総合研究所 調査部 ビジネス戦略研究センター所長)

講演(3) 二宮 大祐 氏 (イオン株式会社 人事企画部、神戸大学MBAフェロー)

〜コーヒーブレイク〜

パネル討議
〈司会〉平野 光俊
〈パネラー〉
守島 基博 氏 氏
山田  久 氏
金井 壽宏(神戸大学大学院経営学研究科 教授