過去の開催記録

第58回ワークショップ

トップアスリートの キャリア・トランジションから学ぶ

日  時
2007年6月17日(日) 13:30〜17:00
場  所

神戸大学大学院経営学研究科 本館102教室

参 加 費

概 要

プロ・スポーツ選手やオリンピック選手などが、その競技人生を終えた後にどのようにキャリアを歩んでいるのかについて、関心が集まっています。Jリーグを例にとれば、引退平均年齢は25.6歳であり、人生のきわめて早い時期に一つのキャリアを断念し、新たなキャリアを模索しなければなりません。しかし、コーチやスタッフとして競技にかかわる仕事が続けられるケースはまれであり、多くは他の業界に職を求めたり、就学したりしています。収入や知名度などで社会の脚光を浴びた競技人生から、他の職業や役割を得るまでの過程は、社会的・経済的・心理的に大きな負担が強いられるため、円滑な役割移行が進まないことも多いようです。また、競技スポーツというきわめて特殊な世界に身を置いたトップアスリートに対して、周囲の人々が、有名人ゆえに媚びて機嫌をとる一方で、気を遣って隔てがましい態度をとるという極端な接し方をしがちであるために、産業界も教育界も大きな助けとはなっていません。一つの領域で頂点を極めた豊かなエネルギーを、別の活躍の場に振り分けるためのアドバイスやサポートを行うためには、われわれは、トップアスリートのキャリア・トランジションの実態について多くを知り、温かな目を向けていくことが必要なのです。

他方、キャリア上で大きな変節点を通過したアスリートの経験は、われわれにいくつかの示唆を与えてくれます。第一に、現役時代に競技を通じて青少年のロールモデルとなることを求められるトップアスリートの場合には、そのセカンド・キャリアについても、若年労働者のロールモデルとなる可能性が高いと思われます。近年、若年の無業者や非正規従業員の増加が社会問題化していますが、若年層のキャリア移行を考える上で、同世代のスポーツ選手のキャリア・トランジションのあり方がモデルとなる可能性があります。第二に、転職やキャリア・チェンジを考えている現役・ミドル世代の労働者にとっては、多くのアスリートが引退時に経験するキャリアの大きな断絶を知れば、新たな可能性を感じることができます。最後に、定年退職を控えたシルバー世代には、競技人生から引退して新たな活動領域に適応していくアスリートの経験から、メンタル面での示唆を得られるでしょう。

このワークショップでは、トップアスリートが抱えてきたキャリア面での問題点を明らかにするとともに、そこから、人生設計・キャリアデザイン上での示唆を得ることを目的としています。多数の皆さまのご参加を期待しております。

第58回ワークショップは、「トップアスリートのキャリアトランジションから学ぶ」というタイトルで、6月17日に開催されました。ソウル五輪シンクロ銅メダリスト田中ウルヴェ京氏、元浦和レッズ西野努氏、元ラグビー日本代表林敏之氏の3名のトップアスリートの方々をお呼びし、現役時代の雄姿を映像でご覧いただいた後に、現役時代の苦労、引退に伴う苦悩や自信喪失、新たなキャリアを見出した後の生き方について、経験に裏打ちされた豊かな持論を語っていただくことができました。冒頭に、当研究科の金井教授より問題提起があり、キャリアにかかわる理論問題と、トップアスリートの得意な経験をつなげる基礎をご教授いただきました。終盤では、会員・非会員を問わず、多数の方々にご参加いただき、短い時間でありましたが、活発な質疑応答を行うことができました。ワークショップの概要は『ビジネス・インサイト』第59号に掲載する予定です。トップアスリートのキャリアに関する掲載論文とともに、ワークショップの抄録から、皆様のこの分野におけるご関心、ご理解が一層深まるよう願っております。

プログラム

テーマ説明
高橋 潔
(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

問題提起
金井 壽宏
(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

コーヒーブレイク

パネルディスカッション
〈司会〉高橋 潔 (神戸大学大学院経営学研究科 教授)
〈パネリスト〉
田中ウルヴェ京((株)MJコンテス取締役、日本大学医学部講師、
ソウル五輪シンクロデュエット銅メダリスト)
西野 努(オプト・スポーツ・インターナショナル(株)代表、元浦和レッズ)
林 敏之((株)神鋼ヒューマン・クリエイト、
NPO法人ヒーローズ理事長、元ラグビー日本代表)
金井 壽宏(神戸大学大学院経営学研究科 教授)