第28巻 第3号(No.111 Autumn 2020)

▶経営フロントライン

特集

コロナ禍と経営・経営学
三矢 裕(ビジネス・インサイト編集長 / 神戸大学大学院経営学研究科 教授)

1.COVID-19と経営戦略
三品和広(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

2.ポスト・コロナの時代のOODAマネジメント
原田 勉(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

3.コロナ禍で突きつけられた中小・零細企業のビジネスモデルの再構築
忽那憲治(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

4.新型コロナウィルス時代におけるグローバル・サプライチェーンのリスクマネジメント
梶原武久(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

5.サプライチェインのレジリエンス
宮尾 学(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)

6.With/Afterコロナの世界でのマーケットとビジネス
黄  磷(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

7.コロナ禍におけるデジタル・トランスフォーメーション
高嶋克義(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

8.ウィズ・コロナにおけるエフェクチュエーションの重要性
栗木 契(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

9.コロナショックと経済統計 -購買データから見た消費動向の変化
藤原賢哉(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

10.COVID-19でも広義の交通は減らなかった?
三古展弘(神戸大学社会システムイノベーションセンター 教授)

11.COVID-19の感染拡大による航空会社への影響とその対応
角田侑史(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)

12.新型コロナウィルスと病院のキャパシティ・コスト
松尾貴巳(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

13.ウイズコロナ時代の働き方改革
上林憲雄(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

14.「見えにくさ」と対峙する:アンケート調査から見える新型コロナウイルスの影響
服部泰宏(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)

15.これからの企業資料のあり方
平野恭平(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)

16.今後の初等教育のオンライン化について考える
保田隆明(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)

17.新型コロナウイルス感染症下の企業情報開示と証券市場
音川和久(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

18.新型コロナウイルス感染症拡大下で社会を維持するための所得再分配政策
鈴木一水(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

19.COVID-19パンデミックに際して企業の経済活動を再定義する
國部克彦(神戸大学大学院経営学研究科 教授)

特別企画

コロナ禍にビジネスを考える

MBA Cafeに集まろう

2019年度 加護野忠男論文賞受賞者による受賞論文発表会についてのご報告
溝手紳太郎

▶編集後記

経営フロントライン

withコロナ時代の経営学

withコロナ時代の経営学

今日、コロナ危機の影響を受けて、介護福祉や教育現場、各地域での経済活動が注目されている。企業ではリモートワークが進展し、人事制度改革、情報ネットワークの活用など様々な課題が現れている。これらの社会変化に対して、新たな経営手法を確立していくことは実践的に重要である。

同時に、コロナがもたらす社会変化は経営学説そのものにも大きな価値転換をもたらしうる。経営学の諸学説は、これまで大きな環境変化や産業発展の中で現実の課題への応答として形成されてきた。たとえばテイラーの科学的管理法は19世紀末のアメリカの産業化の急速な進展の中で提唱されたものであり、バーナードの組織論的管理論は20世紀初めの世界恐慌や全体主義の台頭の中で、個人の主体性を活かした組織マネジメントの論理を探求したものであった。

では、withコロナ時代における経営学はどういった価値志向で社会に理論枠組みを提供しうるのか。社会傾向として分散・多極化が進むともいわれる。実際、働く場としての組織では機能集約化から分散化、ネットワーク化が進み、階層的な組織構造が解体されつつある。こうした動きは、これまでの合理主義的な価値志向やグローバル一元主義からの変容の契機となりうる。経営学説史を研究する者として、こうした問題に対して、これまでの経営学説とその歴史的背景を紐解きながら丁寧に考察していきたい。

庭本佳子 (神戸大学大学院経営学研究科 准教授)