第29巻 第4号(No.116 Winter 2021)

経営フロントライン

特集

 ミレニアル世代が描くライフ・ワーク・デザインとは  堀口真司

第106回ワークショップ

 ミレニアル世代のライフ・ワーク・デザイン

トップ・インタビュー

 子連れMBA:子育てをビジネスパーソンの学びの機会に
 赤坂美保(一般社団法人ぷちでガチ 代表理事)

プロフェッショナルの仕事術

 MBAでの学び直しの効果  一宮 泉(ダイドーグループホールディングス株式会社)

プラットフォーム

 『経営学の開拓者たち』出版記念シンポジウムのご報告
   輪読会のご報告

MBA Cafeに集まろう

 2021年の活動と神戸大学MBAポスターセッションについてのご報告
 多喜田保志

インフォメーション

 第107回ワークショップ

編集後記

経営フロントライン

事前計画を超えた価値を他者と共創する

 思わぬ人との出会いや、考えもしなかった提案を受けて、当初の計画の範囲を超えて、新しい方向に物事が展開することがある。企業活動でも、想定外の顧客の反応をきっかけに、新しい製品開発・技術開発が進むこともあれば、取引先ではない他社との別の取り組みから、意図せずして新たな販路が開拓されることもある。私たちの人生も、ビジネスの成功事例も、計画によっては完全にコントロールできないプロセスで満ちている。

 こうした現象を捉えようとする努力の一つに、「価値共創」の研究がある。特に過去10数年のマーケティング研究では、価値は生産者によって作り込まれるのではなく、顧客や様々なステークホルダーとの相互作用を通じて共創されるという見方が支配的になった。中心的な議論であるS-Dロジックの重要な指摘は、私たちが実際に交換しているのは、相手の持つ資源の潜在価値を高めるような知識・スキル(オペラント資源)であり、「製品」はそのための手段に過ぎないという点だ。目的達成のための計画やマネジメントが重要である一方で、相手の資源やスキルを理解するオープンな対話を通じて、共に新しい目的自体を創造していくアプローチも求められている。

吉田 満梨 (神戸大学大学院経営学研究科 准教授)