第29巻 第4号(No.116 Winter 2021)
特集
第106回ワークショップ
トップ・インタビュー
子連れMBA:子育てをビジネスパーソンの学びの機会に
赤坂美保(一般社団法人ぷちでガチ 代表理事)
プロフェッショナルの仕事術
MBAでの学び直しの効果 一宮 泉(ダイドーグループホールディングス株式会社)
プラットフォーム
・『経営学の開拓者たち』出版記念シンポジウムのご報告
・輪読会のご報告
MBA Cafeに集まろう
2021年の活動と神戸大学MBAポスターセッションについてのご報告
多喜田保志
インフォメーション
▶編集後記
経営フロントライン
事前計画を超えた価値を他者と共創する
思わぬ人との出会いや、考えもしなかった提案を受けて、当初の計画の範囲を超えて、新しい方向に物事が展開することがある。企業活動でも、想定外の顧客の反応をきっかけに、新しい製品開発・技術開発が進むこともあれば、取引先ではない他社との別の取り組みから、意図せずして新たな販路が開拓されることもある。私たちの人生も、ビジネスの成功事例も、計画によっては完全にコントロールできないプロセスで満ちている。
こうした現象を捉えようとする努力の一つに、「価値共創」の研究がある。特に過去10数年のマーケティング研究では、価値は生産者によって作り込まれるのではなく、顧客や様々なステークホルダーとの相互作用を通じて共創されるという見方が支配的になった。中心的な議論であるS-Dロジックの重要な指摘は、私たちが実際に交換しているのは、相手の持つ資源の潜在価値を高めるような知識・スキル(オペラント資源)であり、「製品」はそのための手段に過ぎないという点だ。目的達成のための計画やマネジメントが重要である一方で、相手の資源やスキルを理解するオープンな対話を通じて、共に新しい目的自体を創造していくアプローチも求められている。